お話

張飛の妻と夏侯覇 魏の名門夏侯一族→蜀漢へ転身した人生

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私、まだ14才だった。

よく知らない大人たちの山砦に入ることは怖かったし、
生活が安定したと思ったらすぐに曹操軍10万人に囲まれて
汝南から逃げることも怖かったけど、 私のことを守ってくれるあの人・張飛を本物だと感じた。

あの淮南の紀霊将軍を討ち取った武勇も聞いたし、
汝南に散らばる黄巾賊の残党たちから英雄視されているのを自分の目でも見た。

張飛が並みの男でないことは、すぐに分かっていた。

そうした豪傑、万人を統べるべき武人が、私には一対一で向き合ってくれる。

嬉しいことだった。

それはね、趙雲・関羽ともっといい男は周りにいたけど、
巡り逢ってしまった運命と割り切るしかない。

張飛の妻


新野から江陵へと逃げる時、長坂で曹操軍に追い付かれた時の恐怖は最大だった。

糜兄弟が率いる護衛隊はあっという間に破られ、
義姉の糜夫人・甘夫人とも離れ離れ。

趙雲の単騎駆け、長坂橋での夫の豪腕ぶりに劉備軍も私たちも救われたけど、
あんな怖さ、まったく耐えられるものではなかったの。

私だけを守るために夫を私の周りに縛り付けることもできないし、
けど怖いものは怖いし。

それからは荊州から益州を得て、
蜀漢に根を張ると劉備軍も夫もますます巨大化していった。

もう西蜀に不可欠な存在として、右将軍だの車騎将軍だのご立派な官職がついた。

私に対しては昔と変わらずピュアな大男としての夫・張飛

彼が部下に殺されるまでの21年間、
私との夫婦関係は凸凹あまりなく、割合平穏だったかな。



「ねえ、あなたはつい最近まで魏の征蜀護軍だった人だけど、
私の族兄でもあるのよね?」

張飛の妻は、蜀漢に投降してきた夏侯覇にそう話しかけた。

「あなただけには話しておきたかったの、
張飛の妻としての私の人生はそんな感じだった」

うつむいて、夏侯覇は短く言葉をつなげた。

「魏の名門夏侯一族でいて、宿敵の蜀漢の五虎大将軍のひとり・張飛益徳の妻。
数奇な運命ですね、あなたは。
まぁ、今の私もあなたのことを変わり者と言えない立場ですが」

張飛の妻と、蜀漢に亡命した後に地位を得た元・魏の親族の会話。







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